INTERVIEW「中学受験にどう挑戦するか」

インタビュー

『中学入試にどう挑戦するか』シリーズインタビュー第2回は、
日能研関東 関東中学情報部の長谷川 信誓先生に、「保護者・受験生応援メッセージ」を頂きました。

来年中学受験を控える受験生と保護者様は、新型コロナウイルスの影響で大変ご不安な状況にあろうかと思います。今年は前半の学習も学校説明会もオンラインであるため、「例年通りなら」という気持ちを殊のほか強くしているに違いありません。申し遅れました。私は日能研関東関東中学情報部に籍を置いております長谷川と申します。何年か前までは、お子さまと同じ日能研の教室で、毎年受験の泣き笑いを共にしてきました。

さて、保護者様が今お子さまの心配な点を一つあげるとしたら、それは希望の学校に合格できるかどうかということに尽きるのではないでしょうか。そのため目指している学力レベルまで到達できるのか、果たして間に合うのか、そうした心配が不安を呼んでいるといえます。現在の塾での様子をお伝えすると、日能研では(恐らく他の塾でも同じだと思いますが)、オンライン授業中に定着が甘かったところ、例年受験生が苦手とするところの穴埋めをしながら、元の水準に戻しております。特に3~5月分の学習内容は全力でカバーしながら漏れがないように進めておりますのでご安心いただきたいと思います。

ここで中学受験勉強の仕組みを少しお伝えします。保護者のみなさんは受験勉強の一番の肝は何年生だと思われますか。「それは6年生でしょう」という声が聞こえてきそうですが、正しくは5年生です。5年生の受験勉強は、入試問題の基礎・基本となります。ですから不安な単元があるなら、もう一度5年生のテキストに戻ってもいいくらい5年生の勉強は大切なのです。そのように考えると、多くの受験生は5年生までの勉強は、理解の大小こそあれ一通りの勉強をしてきています。どうか過度に心配をなさいませんように。

では、6年生はどういう学年かというと、「演習」をする学年です。5年生の基礎・基本を、「演習」を通して理解し直す学年です。ですから、お子さまに課せられているのは、貪欲に「演習」を続けることなのです。よって入試本番までに「この問題見たことがあるな」という問題の数(経験値)をどれだけ増やしていくかが鍵となります。見たことがある問題の出題はそれだけでも心が優位に立てるでしょう。そして「見たことがある」から「分かる」へ。「分かる」から「できる」というレベルまで引き上げていくのが、これからの目標です。この問題はできないという問題が最後まであっても構いません。最終的に自分にとって「できる問題」なのか「できない問題なのか」の判断ができることが、試験時間を有効に使うことにもつながってくるからです。

それでは今後、お子さまの実力は何で測ればよいでしょうか。日々の演習、模擬試験、志望校の過去問といくつかありますが、大事にしていただきたいのは、模擬試験となります。前期に自宅受験を含む模擬試験の結果は、得点のでこぼこがかなり散見されたはずです。ですから夏期講習が終了して、そのでこぼこが少しでも小さくなっている後期の模擬試験の方が、「できる」「できない」の判定材料としては相応しいとなります。満遍なく良問が出題される模擬試験は、実力を測る最高のバロメーターになります。そして、ここでも貪欲に間違えた問題の直しを行います。過去問もとても大事なツールに違いありませんが、過去問が傾向と対策を知り、制限時間内での試験の取り組み方を知るという意味においては、過去問の点数だけにこだわったお子さまへの評価は禁物です。くれぐれもお気をつけください。

来年の入試は、新型コロナウイルスの事態を受けて、入試範囲の縮小などの処置を取る学校も一部発表されています。しかし、多くの学校は例年通りの出題となるでしょう。なぜなら、中学受験は小学校の学習指導要領に基づきながらも、塾のカリキュラムを想定して作られるからです。その点でのご不安は受験生にとってみんな同じ条件ですから、気持ちを切り替えていただきたいと思います。ただし、例年より受験勉強の準備や完成に時間がかかることが予想されますので、受験生のボーダーラインが下がることも大いに考えられるところです。また学校によっては、試験時間を短縮して問題数を減らすところも出て来ました。

ボーダーラインが下がるということは、難易度の高い問題で差がつきにくくなるということです。つまり、みんなができる基本的な問題で差をつけられては後からの挽回が苦しくなります。また問題数を減らす場合は、一問一問の配点が高くなりますので、やはりここでも基本的な問題を丁寧に得点していくことが求められます。よって、来年の中学入試は、例年以上に基礎・基本を取りこぼすことなく、確実に正解できるかが合否の鍵を握ることになるでしょう。このような入試問題の背景が分かれば、必要以上に慌てる必要はありません。是非とも、焦りからお子さまを追い立てることなく、受験勉強に向かわせていただきたいと思います。

最後に受験生のみなさんにお伝えしたいことがあります。

受験生のみなさんは記憶にはないかも知れませんが、今から9年前に東北を中心とした、東日本大震災がありました。その時は受験勉強をとても続けられる状況にありませんでした。原発が止まってしまったため、電力の供給ができず、街一帯から灯りがなくなり、信号もつかないという恐ろしい経験をしました。それから数日して、私がいた日能研の教室は計画停電の対象地域となり、電気が使える時間に制約が出されました。それが夜の時間帯にあたると教室は真っ暗になります。お手洗いも使えません。しかし、それでもみなさんの先輩たちは、学びを止めることはしませんでした。一人ひとりが持参した懐中電灯で手元を照らしながらノートを取り、黒板の文字を見る時は、みんなで一斉に黒板の方向に明かりを向け、協力しながら授業を進めていったのです。そして諦めることなく見事に合格を勝ち取ってきました。この年の受験生を忘れることができません。

今みなさんは、本当に大変な中で中学受験勉強を続けています。しかし、みなさんのがんばりは、ご家族の方がいつも傍で見ています。塾の先生も見ています。どうか、日々の限られた時間の中で、一日一日、自分ができる精一杯のベストを尽くしていただきたいと思います。そして、記憶に残る受験をしてもらいたいと願っています。

来年中学受験を控える受験生と保護者様は、新型コロナウイルスの影響で大変ご不安な状況にあろうかと思います。今年は前半の学習も学校説明会もオンラインであるため、「例年通りなら」という気持ちを殊のほか強くしているに違いありません。申し遅れました。私は日能研関東関東中学情報部に籍を置いております長谷川と申します。何年か前までは、お子さまと同じ日能研の教室で、毎年受験の泣き笑いを共にしてきました。
さて、保護者様が今お子さまの心配な点を一つあげるとしたら、それは希望の学校に合格できるかどうかということに尽きるのではないでしょうか。そのため目指している学力レベルまで到達できるのか、果たして間に合うのか、そうした心配が不安を呼んでいるといえます。現在の塾での様子をお伝えすると、日能研では(恐らく他の塾でも同じだと思いますが)、オンライン授業中に定着が甘かったところ、例年受験生が苦手とするところの穴埋めをしながら、元の水準に戻しております。特に3~5月分の学習内容は全力でカバーしながら漏れがないように進めておりますのでご安心いただきたいと思います。
ここで中学受験勉強の仕組みを少しお伝えします。保護者のみなさんは受験勉強の一番の肝は何年生だと思われますか。「それは6年生でしょう」という声が聞こえてきそうですが、正しくは5年生です。5年生の受験勉強は、入試問題の基礎・基本となります。ですから不安な単元があるなら、もう一度5年生のテキストに戻ってもいいくらい5年生の勉強は大切なのです。そのように考えると、多くの受験生は5年生までの勉強は、理解の大小こそあれ一通りの勉強をしてきています。どうか過度に心配をなさいませんように。
では、6年生はどういう学年かというと、「演習」をする学年です。5年生の基礎・基本を、「演習」を通して理解し直す学年です。ですから、お子さまに課せられているのは、貪欲に「演習」を続けることなのです。よって入試本番までに「この問題見たことがあるな」という問題の数(経験値)をどれだけ増やしていくかが鍵となります。見たことがある問題の出題はそれだけでも心が優位に立てるでしょう。そして「見たことがある」から「分かる」へ。「分かる」から「できる」というレベルまで引き上げていくのが、これからの目標です。この問題はできないという問題が最後まであっても構いません。最終的に自分にとって「できる問題」なのか「できない問題なのか」の判断ができることが、試験時間を有効に使うことにもつながってくるからです。
それでは今後、お子さまの実力は何で測ればよいでしょうか。日々の演習、模擬試験、志望校の過去問といくつかありますが、大事にしていただきたいのは、模擬試験となります。前期に自宅受験を含む模擬試験の結果は、得点のでこぼこがかなり散見されたはずです。ですから夏期講習が終了して、そのでこぼこが少しでも小さくなっている後期の模擬試験の方が、「できる」「できない」の判定材料としては相応しいとなります。満遍なく良問が出題される模擬試験は、実力を測る最高のバロメーターになります。そして、ここでも貪欲に間違えた問題の直しを行います。過去問もとても大事なツールに違いありませんが、過去問が傾向と対策を知り、制限時間内での試験の取り組み方を知るという意味においては、過去問の点数だけにこだわったお子さまへの評価は禁物です。くれぐれもお気をつけください。
来年の入試は、新型コロナウイルスの事態を受けて、入試範囲の縮小などの処置を取る学校も一部発表されています。しかし、多くの学校は例年通りの出題となるでしょう。なぜなら、中学受験は小学校の学習指導要領に基づきながらも、塾のカリキュラムを想定して作られるからです。その点でのご不安は受験生にとってみんな同じ条件ですから、気持ちを切り替えていただきたいと思います。ただし、例年より受験勉強の準備や完成に時間がかかることが予想されますので、受験生のボーダーラインが下がることも大いに考えられるところです。また学校によっては、試験時間を短縮して問題数を減らすところも出て来ました。
ボーダーラインが下がるということは、難易度の高い問題で差がつきにくくなるということです。つまり、みんなができる基本的な問題で差をつけられては後からの挽回が苦しくなります。また問題数を減らす場合は、一問一問の配点が高くなりますので、やはりここでも基本的な問題を丁寧に得点していくことが求められます。よって、来年の中学入試は、例年以上に基礎・基本を取りこぼすことなく、確実に正解できるかが合否の鍵を握ることになるでしょう。このような入試問題の背景が分かれば、必要以上に慌てる必要はありません。是非とも、焦りからお子さまを追い立てることなく、受験勉強に向かわせていただきたいと思います。

最後に受験生のみなさんにお伝えしたいことがあります。

受験生のみなさんは記憶にはないかも知れませんが、今から9年前に東北を中心とした、東日本大震災がありました。その時は受験勉強をとても続けられる状況にありませんでした。原発が止まってしまったため、電力の供給ができず、街一帯から灯りがなくなり、信号もつかないという恐ろしい経験をしました。それから数日して、私がいた日能研の教室は計画停電の対象地域となり、電気が使える時間に制約が出されました。それが夜の時間帯にあたると教室は真っ暗になります。お手洗いも使えません。しかし、それでもみなさんの先輩たちは、学びを止めることはしませんでした。一人ひとりが持参した懐中電灯で手元を照らしながらノートを取り、黒板の文字を見る時は、みんなで一斉に黒板の方向に明かりを向け、協力しながら授業を進めていったのです。そして諦めることなく見事に合格を勝ち取ってきました。この年の受験生を忘れることができません。
今みなさんは、本当に大変な中で中学受験勉強を続けています。しかし、みなさんのがんばりは、ご家族の方がいつも傍で見ています。塾の先生も見ています。どうか、日々の限られた時間の中で、一日一日、自分ができる精一杯のベストを尽くしていただきたいと思います。そして、記憶に残る受験をしてもらいたいと願っています。
<プロフィール>
長谷川 信誓(はせがわ・のぶちか)
日能研日吉校、自由が丘校など20年間の教室勤務の中で、責任者として2500人以上の卒業生を送り出してきた。
現在は 関東中学情報部にて学校情報をメインに、受験生親子が不安のないように後方支援にあたっている。
長谷川