「国際シンポジウム」に参加しました

お知らせ
6/24(土)に開催された「国際シンポジウム」に、昭和女子大学とテンプル大学の大学生、BST(British School in Tokyo)の高校生に混ざり、本校から3名の高校生が参加しました。「教育の未来、学びの未来---テクノロジーは学びの質の向上のためにどのような活用ができるのか?」というテーマのもと、「生成AI」「メタバース」「デジタル格差」の3グループに分かれ、約1か月半準備を重ねてきた成果を披露しました。
板津木綿子東大教授(情報学環・学際情報学府)による基調講演ではまず、生活のあらゆる場面に入り込んでくるAIが社会や人間に与える影響と功罪が述べられました。まるで本物に見えるフェイク画像や、ホロコーストを生き延びた証言者へのバーチャル質問などの例を挙げつつ、真偽を見分けるためのリテラシー育成の重要性が語られました。教育への影響という側面では、授業以外の事務をAIに任せ、教師はより重要な業務(授業の質向上等)に集中できるようになるメリットがある一方、過度の依存は、本来生徒が身に着けるべき思考力や判断力の低下を招きかねないデメリットがあると指摘しました。今後の課題として、AIに期待できない適正な倫理的判断ができるようになるためのリベラルアーツ教育の重要性や、現在の生成AIの基盤となっている大規模言語モデルが持つ言語的・文化的偏りを是正するためには、英語圏以外の異文化や周縁(貧困層)に属する人々の多様な価値観を収集し反映することが必要である、との指摘で締めくくられました。
続けて各グループからの学生発表へと移り、以下のような議論が繰り広げられました。
【生成AI】
・AIが雇用に及ぼす影響は、収入・学歴が低くなるほど大きくなる。例えば運転・運送、ヘルスケア、メディア、カスタマーサービス等の職種で特に代替が進んでいく。
・教育への影響としては、AIを正しく使うためのAIリテラシー教育の重要性が増す。より有効な問いを立てる(=プロンプト・エンジニアリング)教育が必須となる。サーチエンジン検索よりも効率的なリサーチが可能となる。外国語習得にも大きな力を発揮する。
・我々の生活を大きく革新することは間違いないが、倫理的に正しい形で活用することが求められる。
【メタバース】
・バーチャルクラスルームの可能性:教室では実現できない体験学習をもたらす。地域的・経済的ハンディなく、どこにいても同等の疑似体験ができるようになる。対面での対話が苦手だった学生も、より活躍の機会を得ることができる。
・メタバースの可能性は大きいが、維持コストや十分なセキュリティ対策が課題である。
【デジタル格差】
・デジタル格差とは、ICTテクノロジーへのアクセス・利用における経済的・社会的格差のことである。①アクセス格差(デジタル機器保有・インターネットアクセス環境)、②スキル格差、③品質格差(回線の信頼性・速度)という3つの格差が存在する。デジタル・ジェンダー格差の存在も忘れてはならない。世界全体で見ると、インターネット環境は女性の方が男性よりも約12%低い。途上国における携帯電話の所有率にも同様の傾向がある。
・格差をもたらす4つの要因:①不十分な国家予算、②不十分な教育、③不正など政治的要因、④技術基盤の未整備。
 その後の会場と学生との質疑応答もとても印象的でしたが、最後に一つサプライズが私たちを待ち受けていました。閉会の辞を話し終わった後、テンプル大学のタオカ副学長が学生たちに、「今の挨拶を聴いて何か感じたことはないですか」との質問を投げかけ、少し戸惑う学生たちを前に、種明かしをしました。何と閉会の辞は「生成AI(Google のBard)が書いたものをそのまま読み上げた」ものだったのです。言われてみれば、いかにもありがちな「表面的・抽象的で凡庸な」その内容に、現状のAIの限界に自然に気づかされるという心憎い演出で、3時間以上に及ぶシンポジウムは締めくくられました。
最後に、中高部から果敢にチャレンジした3名の振り返りコメントで締めくくりたいと思います。
《5年・Iさん(生成AI)》私は国際シンポジウムの参加を経て、諦めずに英語を話すことの重要性を改めて感じました。スライド作りに向けてのミーティングでは、先生から意見を求められるような、咄嗟に英語を話す機会が多くありました。私は文法や単語が適切か不安になってしまい、なかなか英語で意思表示できないことが多くあったのですが、自分の知っている単語や文法を最大限に活用して話すようにしました。しかし、会場では緊張もあり、いつもよりも自分の気持ちを英語で話すことが出来なかったという反省もあります。これからは今まで以上に、持っている知識を活かして自分の気持ちを積極的に伝える努力を続けていきたいです。
《4年・Sさん(メタバース)》私は体調不良のため、当日はシンポジウムに参加できませんでしたが、グループでの発表準備を通じて多くのことを学びました。一つは、期限を守ることの大切さです。一人が期限に遅れると、グループ全体で作業が滞ることを実感しました。自分の行動に責任を持つことができるようになったと感じています。また、グループでオンラインミーティングを重ね、自分の英語力に自信を持つことができるようになりました。ミーティングでは、自分の意見を伝えることの大切さも学びました。自分の意見を積極的に述べ、話し合いを重ねることで、より良い発表を作り上げることができたと思います。
《4年・Kさん(デジタル格差)》私は今回の国際シンポジウムを通して自分の意見を発することの大切さを学びました。今回の発表に当たって数回、ほぼ全て英語で進むミーティングが行われました。ミーティングの中で「ここはどうなのか」「ここはこうするべきではないのか」と思ったことが何回かあったものの、自分の英語力ではうまく伝わらないのではと思い、伝え損ねてしまったことがあります。しかし、当日の質疑応答の時には質問の答えを英語で考え、自信を持って発言することができました。今回の経験は、自分の日ごろの英語の学習と自分が発言をする意欲を見直すきっかけとなりました。今回学んだことを生かして、これからも様々なことに挑戦したいと思います。
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